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通常の維持管理に関しては、少なくとも週1回防波堤の清掃を実施している他、島内の一斉掃は年4回実施している。また、暴風雨後の塩害や釣り後の汚れに対しては清水を散布して洗い流している。

 

Table−4. Restriction of Use and Safety Equipment

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5−2. 防波堤の利用状況
リゾート博期間中の72日間で約298万人がマリーナシティを訪れ、うち防波堤への入場者は約21万人であった。現在でも島内でイベントが開催されているときなどは多くの人が防波堤を訪れており、人々の憩いの場としての機能を十分に果たしている(Photo−3.参照)。

 

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Photo−3.Comfortable Waterfront Space on The Breakwater

 

5−3. 防波堤周辺の海生生物
当該防波堤による海生生物の生息環境への寄与の程度を把握するために、平成8年7月に、防波堤周辺の生物調査を行った(Photo−4.参照)。その結果、防波堤のケーソン部、被覆石部を中心にマクサ等約15種類の海藻類、イワフジツボら約30種類の底生動物が生息し、これらを餌とするメジナ、クロダイ、メバル、サザエ、アイナメ等の魚介類が生息していることがわかった。防波堤の存在は岩礁性の環境を形成し、付着動物、海藻、同遊魚、岩礁性魚類等の生息場所を提供していると思われる。また、防波堤スリット内部は、波浪の影響を軽減し静穏域を形成して、メバルを始めとする魚介類の生活空間となっている。
なお、当防波堤は平成4年度に据え付けられてから4ヶ年が経過している。過去のデータはないものの、今回調査時の付着生物の種類や被度が豊富なことや魚介類の蝟集状態から、これから先あまり変化のない最終的な生態系を形成する段階にまで達しているのではないかと考えられる。

 

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Photo−4.Living Creatures on The Surface of The Caisson under Water

 

6. まとめ

和歌山マリーナシティ親水性防波堤は、防波機能を有するだけでなく、景観と調和し、一般民が自由に出入りして安全に集い、憩い、散策できる、我が国初の本格的な親水性防波堤である。また、当防波堤は海生生物にとっても良好な生活環境を与えていることが分かった。
当防波堤においてなされた景観設計手法、施工方法等、親水性機能の導入のための諸検討が、今後他の親水性港湾施設の整備の参考となれば幸いである。また、当防波堤自身も、長く市民に親しまれるよう、関係者の連携を図りながら引き続き適切な維持管理を実施していくことが必要と考えている。

 

参考文献

1)沿岸域の景観設計に関する共同研究報告書
平成7年8月(財)沿岸開発技術研究センター
2)和歌山下津港毛見地区防波堤環境生物調査報作書
平成8年7月運輸省第三港湾建設局和歌山港工事事務所

 

 

 

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